SHORT STORY『風の向こうで』
- guitar0831
- 4 日前
- 読了時間: 1分

夕暮れの街を歩いていると、風がふっと頬をかすめた。
それはまるで、誰かが「大丈夫」と囁いてくれたようだった。
あの日、うまくいかないことが続いて、
自分の力なんて、たかが知れてると思っていた。
でも、立ち止まったその瞬間にだけ、
聞こえる声があることを、僕は忘れていた。
静かな風の音。
それは、誰かの優しさでもなく、奇跡でもない。
自分の中にある、まだ諦めていない“何か”の音だった。
思い返せば、何度もそうやって歩いてきた。
誰かの背中を追いながら、本当は自分の足で進んでいたことに、
あとから気づく。
見えない風は、きっとそういうものだ。
前に進む力は、外からもらうものじゃない。
それは、心の奥でずっと眠っていた。
信じるという小さな炎のように。
足もとを見れば、昨日よりも少しだけ、光がやわらかく見える。
風の向こうには、もうひとりの自分が笑っている気がした。
「風の音は、励ましの声なんだ。
誰かのものじゃない。
自分が、自分にかけている言葉なんだよ。」
──ピーター

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