SHORT STORY『地図と風のあいだで』
- guitar0831
- 5 日前
- 読了時間: 1分

正しさを信じて、まっすぐに進んでいた。
予定表はぎっしりで、地図の線の上を一歩も外れないように、
今日も急ぎ足で歩いていた。
けれど、ある日、風が吹いた。
手にしていた紙の地図がふわりと舞い上がり、
道路の隅でくるくると踊るように回った。
拾おうとした瞬間、なぜか足が止まった。
地図の代わりに目に入ったのは、街路樹の影と、
その隙間からこぼれる午後の光。
見慣れた道なのに、まるで初めて通るような気がした。
「このままでいいのかな」と思った。
正しいことを積み重ねてきたはずなのに、
心のどこかで、何かが欠けているような。
風が頬をなでた。どこかへ導くような、やさしい風だった。
地図にない道を、一歩だけ踏み出してみる。
そこには、目的地も答えもなかったけれど、
なぜか胸の奥が、あたたかくなった。
立ち止まることも、寄り道することも、
地図には書かれていない“生き方”なのかもしれない。
ピーターはいう。
「正しさは道を描くけれど、 愛は、その道に風を吹かせるんだ。」

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